トマト・キュウリにおける
コナジラミ類の発生時期と防除農薬
薬剤抵抗性を防ぐローテーションのポイントを、発育データと防除計画の両面から整理します。
トマトやキュウリに発生するコナジラミ類は、葉の裏から汁を吸って生育を阻害するほか、排せつ物によって「すす病」を引き起こし、果実の品質を低下させます。さらに、タバココナジラミはトマト黄化葉巻病やウリ類退緑黄化病などのウイルス病を媒介するため、発生初期からの防除が極めて重要です。[1][2] 本記事では、トマトやキュウリで問題となるタバココナジラミとオンシツコナジラミを対象に、農薬の選び方や、薬剤抵抗性を抑えるためのローテーション防除のポイントを解説します。
コナジラミ類の発生時期と被害
タバココナジラミは25〜30℃で急増する
タバココナジラミは高温を好み、発育に適した温度は約30℃です。25℃の環境下では、卵から成虫になるまで約19〜25日かかります。[1][3] 一日の平均気温が25℃前後で推移する時期は、約3週間で次の世代の成虫が出現する可能性があるため、発生初期を見逃さないことが大切です。
| 項目 | 記載する数値 |
|---|---|
| タバココナジラミの発育適温 | 約30℃ |
| 25℃での卵〜成虫 | 約19〜25日(資料により幅あり) |
| 25℃での各期間の目安 | 卵7〜8日、幼虫7〜8日、蛹約5日 |
| 露地での世代数 | 年間3〜4世代が目安 |
| 施設内での世代数 | 年間10世代以上になる場合がある |
高温期は、圃場(ほじょう)の外からの飛来と、圃場内での増殖が同時に起こりやすい時期です。黄色粘着板や新葉の裏を定期的にチェックし、成虫や幼虫を確認した段階で農薬による初期防除を開始しましょう。[2][3]
なお、タバココナジラミには複数の系統があり、かつて「シルバーリーフコナジラミ」と呼ばれていたB系統も含まれます。系統によって農薬の効き目(薬剤感受性)が異なる場合があるため、防除効果を確認しながら薬剤を選定します。[1][6]
オンシツコナジラミは春・秋から暖房期にも注意する
オンシツコナジラミはタバココナジラミよりも低温に強く、加温施設では冬場でも増殖します。施設野菜では、気温が上がり始める3月以降と、盛夏を過ぎた8月下旬以降に発生が増える傾向があります。[2] 栽培期間を通じて発生状況を確認し、成虫の飛来や葉裏への寄生が見られたら、適切な農薬で防除を行います。
防除農薬を選ぶ前に確認すること
作物名・使用時期・使用回数
対象作物、対象害虫、希釈倍数、収穫前日数、使用回数を必ず確認する。「トマト」「ミニトマト」「きゅうり」は同じ有効成分・製品でも登録内容が異なる場合がある。[5]
発生初期に使う薬剤か
大量発生後は密度を下げにくいため、成虫の飛来や葉裏への寄生を確認した初期段階で薬剤を選定する。[2][3]
茎や葉が茂りすぎると、薬液が葉裏まで届きにくくなります。日頃の栽培管理で草姿を整え、散布ムラを防ぐことが、安定した防除効果につながります。[7]
トマト・キュウリのコナジラミ類に使用する防除農薬
成虫が黄色粘着板で捕獲された時点、または新葉の裏に卵や幼虫が見つかった時点が防除開始の目安です。高温期は世代交代が早いため、発生初期に1回の散布を確実に行うことが重要です。
発生密度が高くなった場合は、前回使った薬剤とは異なる作用機構の農薬を選びます。散布量や散布する方向を見直し、葉裏までしっかり薬液が届くように作業しましょう。[2]
コナジラミ類に使用できる農薬一覧
RAC(作用機構分類)ごとに区切って掲載しています。ミツバチ影響欄の「X」は影響が大きいとされる薬剤、日数表記は花き・訪花昆虫がいる施設での使用制限の目安です。倍数は薄い方の希釈倍数を基準にしています。
| 使用できる農薬 | 規格 | 倍数 | ミツバチ | コメント | トマト | ミニトマト | キュウリ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| IRAC 3A | |||||||
| アディオン乳剤 | 500ml | 3000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| アグロスリン乳剤 | 500ml | 2000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| アグロスリン水和剤 | 500g | 1000 | X | 即効性 | ◯ | 2000倍 | ◯ |
| トレボン乳剤 | 500ml | 1000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| ロディー乳剤 | 500ml | 2000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| IRAC 4A | |||||||
| アクタラ顆粒水溶剤 | 500g | 2000 | 42日 | 即効性 | ◯ | ◯ | 3000倍 |
| アドマイヤーフロアブル | 250ml | 4000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| アルバリン顆粒水溶剤 | 500g | 3000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| ダントツ水溶剤 | 250g | 4000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| バリアード顆粒水溶剤 | 250g | 4000 | 影響小 | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| ベストガード水溶剤 | 500g | 2000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| モスピラン顆粒水溶剤 | 500g | 2000 | 影響小 | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 4C | |||||||
| トランスフォームフロアブル | 250ml | 2000 | X | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 5 | |||||||
| ダブルシューターSE | 500ml | 1000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| ディアナSC | 100ml | 2500 | X | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 6 | |||||||
| アファーム乳剤 | 500ml | 2000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| アニキ乳剤 | 500ml | 1000 | 1日 | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| コロマイト乳剤 | 500ml | 1500 | 軽度 | ダニ剤 | ◯ | ◯ | ◯ |
| アグリメック乳剤 | 500ml | 1000 | X | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| IRAC 9B | |||||||
| コルト顆粒水和剤 | 500g | 4000 | X | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| チェス顆粒水溶剤 | 100g | 3000 | 影響小 | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 15 | |||||||
| ノーモルト乳剤 | 500ml | 2000 | 影響小 | 脱皮阻害 | ◯ | ◯ | |
| マッチ乳剤 | 500ml | 2000 | 影響小 | 脱皮阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 16 | |||||||
| アプロード水和剤 | 500ml | 1000 | 影響小 | 脱皮阻害 | ◯ | ◯ | |
| IRAC 23 | |||||||
| モベントフロアブル | 250ml | 2000 | 30日 | 遅効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 28 | |||||||
| ヨーバルフロアブル | 500ml | 2500 | X | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| ベネビアOD | 500ml | 2000 | X | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 29 | |||||||
| ウララDF | 500g | 2000 | 影響小 | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 30 | |||||||
| グレーシア乳剤 | 500ml | 2000 | 1日 | 即効性 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 34 | |||||||
| アベンジャーフロアブル | 500ml | 2000 | 影響小 | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| ファインセーブフロアブル | 500ml | 2000 | 影響小 | 即効性 | ◯ | ◯ | |
| IRAC 36 | |||||||
| エフィコンSL | 250ml | 1000 | 影響小 | 摂食阻害 | ◯ | ◯ | ◯ |
| IRAC 4A(燻煙剤) | |||||||
| モスピラン燻煙剤 | 250g | X | 燻煙剤 | ◯ | ◯ | ◯ | |
| IRACコード対象外(展着性・気門封鎖系) | |||||||
| サンクリスタル乳剤 | 500ml | 300 | 影響小 | ◯ | ◯ | ||
| サフオイル乳剤 | 1000ml | 300 | 影響小 | ◯ | ◯ | ||
具体的な登録内容(希釈倍数・使用時期・使用回数・収穫前日数など)は「トマト」「ミニトマト」「きゅうり」で異なる場合があるため、次章のローテーション例と併せて、最新の農薬登録情報で必ず確認してください。[5](本ガイドの薬剤情報は2026年8月6日現在)
薬剤抵抗性を防ぐローテーションのポイント
同じIRACコードの連用を避ける
コナジラミ類は薬剤抵抗性がつきやすい害虫です。同じ作用機構の農薬を続けて使うと、薬の効きにくい個体が生き残り、防除効果が落ちるおそれがあります。[2][6] 製品名だけでなく、作用機構を示す「IRACコード」を確認してください。有効成分や製品名が違っていても、IRACコードが同じであれば同一系統として扱い、連続での使用は避けます。
【ローテーション例】(A → B → C → D → E → A → B …)
| 順 | 薬剤例 | IRACコード | 使用回数の目安 |
|---|---|---|---|
| A | モスピラン顆粒水溶剤 | 4A | 3回以内 |
| B | アファーム乳剤 | 6 | キュウリ2回以内・トマト5回以内 |
| C | ウララDF | 29 | 3回以内 |
| D | ベストガード水溶剤 | 4A | 3回以内 |
| E | グレーシア乳剤 | 30 | 2回以内 |
ローテーション例内の「A(モスピラン)」と「D(ベストガード)」は同じ「IRAC:4A」に分類されます。 実際の現場では、このように同じIRACコードが近くで連続しないよう、異なるコードの薬剤を順番に組み合わせて使用してください。
栽培期間全体で使用回数を計画する
ローテーションは発生してから考えるのではなく、栽培期間全体を見通して計画します。発生初期に使う薬剤、次回発生時に使う薬剤、発生が長引いた場合に使う薬剤を整理し、有効成分ごとの使用回数を管理しましょう。[5] 散布日、製品名、有効成分、IRACコード、使用量、発生状況などを記録しておくと、次の薬剤選定や防除効果の検証に役立ちます。
防除効果を確認し、効きにくさを見逃さない
散布後は、黄色粘着板の捕獲数、新葉の成虫、葉裏の幼虫や蛹の様子を観察します。正しく散布したにもかかわらず効果が不十分な場合は、同じ系統の追加散布は避け、登録内容を確認した上で別の作用機構の薬剤へ切り替えます。[2]
農薬の効果を高めるIPM(総合的病害虫管理)の実践
圃場内外の雑草・残さを管理する
コナジラミ類は多くの作物や花、雑草に寄生します。施設内外の除草を徹底し、観賞用植物などを持ち込まないようにして発生源を減らします。栽培終了後は残さを適切に処分し、次作へ持ち越さないようにしましょう。[2][3]
黄色粘着板で初発を見逃さない
黄色粘着板は成虫の飛来や発生量の把握に有効です。定植直後から設置して定期的に確認し、捕獲数が増えたら葉裏の寄生状況を調査して早期防除につなげます。[2]
















